打ち上げの70ヤード、しかもフォローの風が吹いている——
このようなシチュエーションでは、見た目以上に難しさが潜んでいます。特に「クラブ選び」と「打ち方の選択」によって、結果が大きく変わります。
今回はこのような状況で、どのように戦略を立てて番手と打ち方を選ぶべきかを、初心者〜中級者の方にもわかりやすく解説します。
70y打ち上げ+フォロー風が難しい理由とは?
見た目には70ヤードとわかりやすい距離でも、打ち上げとフォロー風が重なると、ボールが「浮きづらく」「止まりづらく」なります。ここがこの状況の最大の落とし穴です。
ボールが上がりにくくなる理由
打ち上げのライでは、地面とボールの高低差があるために、クラブが「地面に刺さりやすく」なります。またつかまりやすくなる為、スピンがかかりにくい傾向があります。
打ち上げている分、球は上に向かって打ち出されますが、スピンがかかりにくくなると、球が浮き上がりにくくもなります。
フォロー風でスピンが効かない
フォローの場合、インパクトでかかったスピンの効果が弱まり、ボールが浮きにくく、着地後に止まりづらくなります。
つまり、通常の70ヤードのように上がって止まるというというショットではになく、転がりも加味したショットになるという認識が必要なのです。
番手選びの基本:番手を落として“高さ”で止めない
この70ヤードのフォローの状況では、多くの人が「高く上げて止めたい」と思って、SW(サンドウェッジ)を使いがちです。
しかし実際には、スピンもかかりづらく、風の影響でボールが押し戻されにくいため、「高さで止める球」は実現しないリスクが高くなります。
ここでは、あえて番手を上げて、PW(ピッチングウェッジ)や52度ウェッジなど、少しロフトの立ったクラブを使う選択肢も持ち、前後の状況に応じて対応することをおすすめします。
“奥行き”で止めるという考え方
「高さで止める」のではなく、「奥行きで止める」という戦略も有効です。
これは、ボールを低く打ち出して、グリーン面の奥行き(縦の長さ)を活かしながら転がし気味で止める方法です。特にグリーン奥に余裕がある場合や、ピンが手前ではないときに効果的です。
この考え方を持っておくだけで、選択肢が広がり、ミスにも強くなります。
ミスのリスクを整理しておく
戦略的なプレーをするためには、「どんなミスが起こりうるか」を事前に把握しておくことが大切です。
ダフリやすい状況での注意点
打ち上げのライでは、地面とボールの高低差があるために、クラブが「地面に刺さりやすく」なります。
特にフェアウェイや薄い芝の場合、少しでも打点がズレると大きく距離をロスしてしまうため、コンパクトなスイングと確実なインパクトを意識したいところです。
スピンがかからずオーバーする可能性も
フォロー風では、ボールが浮きづらく、かつ着弾してからも転がります。そのため、奥のピンに対して「ピンを狙いすぎる」とさらに奥まで行ってしまう可能性が非常に高くなります。
結果として、「止めたつもりなのにオーバー」というミスを招くのです。
ピンが手前である場合には、手前に着弾したとしても転がりの分で少しピンを過ぎる可能性があることを考えてショットしましょう。
ミス前提での戦略:「2ndベストのミス」を設計する
完璧なショットだけを想定するのではなく、「少しミスしてもこのエリアならOK」という考え方を持っておくと、結果的に大叩きを防げます。
最悪でもボギーで済ませられるルートとは?
例えば、グリーンの左手前が広く、奥が狭くバンカーという状況なら、「左手前に外してもOK、奥はNG」となります。
そうすれば、少しショートしてもパターや転がしで寄せられる状況が残り、ボギーで切り抜ける可能性が高まります。
逆にグリーン手前にバンカー等があり、奥の方がマシという場合は、やはり奥に打つ番手を持つ選択肢が挙がりますし、もし手前も奥もイヤであるなら、その時がどういう状況かが関わってきます。
スコア的に攻めるしかない状況ならバンカーを越えたところにキャリーさせる選択肢がまずは浮かびますし、ボギーまでならOKという状況なら少しサイドに逃げる選択肢もあります。もしくは攻めたい状況でも、そこはボギーを取りにいってその先のホールで勝負をかけるという選択肢もあります。
ここでスコアを守るためにも「ここに打てればパーが狙える。ここにミスしてもボギーで済む」
という“保険をかけておく”戦略や選択肢が、アマチュアではスコアを崩しにくくする鍵になります。
実戦例:どう考えて、どう打つか
実際のシチュエーションを想定して、どのような判断ができるかを見てみましょう。
状況【70y、ピン手前、フォロー】
- 距離:70ヤード
- 打ち上げ:5〜7ヤードほど
- 風:フォロー(追い風)
- グリーン:やや硬め、奥から手前にかけて傾斜
- ピン位置:手前中央
- ライ:フェアウェイ、やや左足上がり
- グリーン奥はバンカー、グリーン手前はバンカー等なし
選択肢
- SWでピンを狙う
→ 風に押されて止まらず、オーバーのリスクが高い - 52度でグリーンセンターを狙う8割ショット
→ フォローで押され奥のエリアに着弾し、傾斜で戻る可能性あり - PWで5~6割のショットをし、グリーン手前を狙う
→ フォロー+転がりでもグリーンセンターには止まり、着弾位置によってはピンの手前に置くことができ、最もリスクが低い方法に(オススメ)
状況【70y、ピン奥、フォロー】
- 距離:70ヤード
- 打ち上げ:5〜7ヤードほど
- 風:フォロー(追い風)
- グリーン:やや硬め、奥から手前にかけて傾斜
- ピン位置:奥め
- ライ:フェアウェイ、やや左足上がり
- グリーン奥はラフ、グリーン手前はバンカー
選択肢
- SWでピンを狙う
→ 風に押されて止まらず、オーバーもあるが○ - 52度でグリーンセンターを狙う8割ショット
→ 狙い通りグリーンセンターに着弾すれば◎、着弾が少し奥や手前になってもピンの前後になる可能性が高く○ - PWで5~6割のショットでグリーン手前から転がす
→ フォロー+転がりでグリーンセンターから奥で止まる可能性もあるが、グリーン手前のバンカーに入る可能性もあり、リスクも高い△
このように前後の状況や奥行きに合わせて落としどころを考えると、スコアを守る選択がしやすくなります。
スコアを守るアプローチの“基本戦略”
打ち上げ+フォローというシチュエーションでは、無理にピンを狙うよりも、次のことを意識してプレーするのが効果的です。
- スピンで止めることを期待しすぎない
- 番手を上げて低く打つ選択肢を持つ
- 転がる前提で狙うエリアを決める
- 最悪のミスを避けるルートを選ぶ
- 2ndベストの着地点を想定しておく
このような視点を持つことで、「グリーンに乗せる」から一歩進んだ、「スコアを守るための攻め方」が実践できるようになります。
まとめ
打ち上げ+フォロー風という状況は、見た目以上に多くの要素が絡み、クラブ選びも打ち方も非常に繊細になります。
「風で戻されず」「スピンがかかりにくい」「ダフリやすい」
——このような前提を理解したうえで、無理にピンを狙わず、安全なエリアに運ぶ判断ができるかどうかがスコアの分かれ道です。
まずは「最悪でもボギー」で収めるための戦略を持ち、慣れてきたらそこからピンを攻めていく。
そんなステップを意識すれば、スコアの安定感は格段に上がるはずです。
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